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Reigen Arataka
霊験研究家。霊験研究所 所長。霊験および霊験あらたかな現象を研究。霊験体験談、神社・聖地・御利益に関する情報をまとめ、私が体験してきた霊験あらたかな出来事や、皆様からいただく様々な霊験あらたかな体験を発信。相談・鑑定も承っています。
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ビルの谷間の稲荷社が導いた転機 by S.K 様

先月、都内で働く会社員のS.Kさん(38歳・男性)から興味深い話を伺う機会があった。彼が体験したのは、まさに「導き」としか言いようのない出来事だったという。

S.Kさんが勤める会社は、新橋と虎ノ門の間にあるオフィスビルの一角にある。IT系の中堅企業で、彼はそこでプロジェクトマネージャーとして働いていた。話を聞いたのは四月の終わり頃だったが、事の発端は三月初旬にさかのぼる。

当時、S.Kさんは大型案件のトラブル対応に追われていた。クライアントとの認識のズレから、開発が大幅に遅れていたのだ。毎晩終電近くまで残業し、休日も出勤する日々が続いていた。「正直、もう限界でした」とS.Kさんは当時を振り返る。

三月中旬のある日の昼休み、いつものコンビニに向かう途中、S.Kさんは見慣れぬ路地に足を踏み入れた。なぜそこを通ったのか、本人にも理由がわからないという。オフィス街の雑居ビルとビルの間、まるで隙間のような細い道だった。

その奥に、小さな祠があった。

「最初は何かの設備かと思ったんです。でもよく見たら、ちゃんとした稲荷神社でした。赤い鳥居も立っていて」

ビルとビルに挟まれた、本当に小さな空間。お稲荷さんの石像が二体、祠を守るように置かれていた。周囲のビジネス街の喧騒が嘘のように、そこだけ静かだったという。

特に信心深いわけでもなかったS.Kさんだったが、なぜかその場を素通りできなかった。スーツ姿のまま、頭を下げて手を合わせた。何をお願いしたわけでもない。ただ、心の中で「どうかこの状況を乗り越えられますように」とだけ思った。

その日の午後、思いがけない展開があった。

クライアントの担当者から連絡が入り、「一度きちんと話し合いたい」と言われたのだ。これまで何度もメールでやり取りをしていたが、対面での打ち合わせは避けられていた。S.Kさんは正直、叱責されるのを覚悟したという。

ところが実際に会ってみると、先方も同じように悩んでいたことがわかった。上層部からのプレッシャー、現場の混乱、コミュニケーション不足。お互いが抱えていた問題を、初めて率直に話すことができた。

「あのミーティングで、すべてが変わりました」とS.Kさんは語る。

その後、プロジェクトの進め方を一から見直すことになった。無理なスケジュールは調整され、チーム体制も再編成された。何より、クライアントとの信頼関係が築けたことが大きかった。一ヶ月後には、プロジェクトは軌道に乗り始めていた。

不思議なのはここからだった。

あの稲荷神社に、もう一度お礼参りに行こうとS.Kさんは思った。確か、あのビルとビルの間の路地を入ったはずだと、同じ道を探した。しかし、どうしても見つからない。何度も周辺を歩き回ったが、あの細い路地そのものが見当たらなかった。

「今でも時々探すんです。でも見つからないんですよ」

S.Kさんは不思議そうに、それでいて穏やかな表情で語った。あの日、あの場所で手を合わせたことは確かなのだと。

私はこの話を聞いて、都市の中に潜む小さな聖域の存在を改めて意識した。見つける人にだけ見つかる場所。必要な時に、必要な人の前に現れる場所。そういったものが、確かに存在するのかもしれない。

S.Kさんは今、新しいプロジェクトに取り組んでいる。あの時の経験は、仕事への向き合い方を変えたという。「困った時は、一度立ち止まって周りを見渡すようにしています。答えは意外と近くにあるんだって、あの時学びました」

ビルの谷間の小さなお稲荷さん。それが本当にそこにあったのか、それとも何か別の存在だったのか。真相はわからない。ただ、S.Kさんの人生に確かに転機をもたらしたことだけは間違いない。

都市の中には、まだ私たちが知らない霊験が眠っているのかもしれない。そんなことを思わせる体験談だった。

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